2026-07
お盆に花を供えよう|定番だけで終わらせない、故人に想いが伝わる素敵なお供え花とは?
花には不思議な力があります。
一輪飾るだけで、急に部屋を掃除したくなったり、視界に入れば自然と口角が上がったり。
花キューピットがお送りするブログ「花だより」は、そんな花のような存在を目指して、皆さんの生活を彩る情報を発信します。
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今年のお盆はどんなお花を供えますか?

今年、2026年(令和8年)のお盆は、8月13日(木)〜16日(日)の4日間です。
お盆期間は休暇をとってレジャー・旅行を楽しむ方も多いかと思います。
ですが、お盆は日本の伝統行事。お墓参りをしたり、お盆飾りを準備したり、迎え火・送り火をしたりと、ご先祖様を供養するのが一般的なお盆の過ごし方です。
そんなお盆に欠かせないのが、お墓や仏壇に添えるお供え花。
香(お線香)・ろうそく・浄水(水)・食べ物と合わせ、ご先祖様へのお供えに欠かせない5つのアイテム「五供(ごく)」の一つです。
お供え花と言えば、白い花や菊のイメージが強いかと思います。
お盆に限らず花を供える機会が多いからこそ、いつも同じような花を供える方や、ついつい暗い雰囲気に仕上げてしまう方もいるのではないでしょうか。
先ほども説明した通り、お盆の意義は、ご先祖様や故人を供養することにあります。
お供えを通じて故人の想いに優しく寄り添うことが大切なのではないでしょうか。
そのためにも、寂しげな空気感ではなく穏やかで明るい空気感をはぐくむことが大切です。
そこで今回は、お盆のマンネリ化を防ぐ「いつもと少しだけ違うお供え花」のイロハをご紹介します。
伝統行事としてのマナーは守りつつ、故人に対する感謝の気持ちや変わらぬ想いを、素敵なお供え花とともに前向きに伝えましょう。
今、「個性あるお供え花」が選ばれている理由

これまでお供え花は、哀悼の意を示すことだけが重要視されてきました。
しかし昨今は、「いつも見守っていてくれてありがとう」という感謝の気持ちや、「これからも想いは一緒だよ」というポジティブな想いをお盆に表現する人が増えているようです。
それには、次のような背景が考えられます。
- 故人を身近に感じるから
「あの人が好きだった花・色」や「あの人の雰囲気にぴったりな花」を選ぶことで、故人の姿を鮮明に思い出すことができます。また、お盆で親戚が集まった時に、「そういえばこの花が好きだったね」などと会話が弾むきっかけにもなるでしょう。
- 残された人の心を癒してくれるから
教科書通りのお供え花だと、故人に寄り添う気持ちよりも悲しみが勝ってしまうという方も多いようです。少しだけ個性あるお花を供え、仏間やリビングが明るくなることで、お盆を迎える家族の気持ちも前向きになるはず。
お供え花のマナーを守りながら「差別化」する3つのポイント

「お盆に変わった花を供えたいけど、個性を出しすぎて失礼になるのでは…?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。
お盆のルール・マナーを押さえた上でお花を選べば、故人やご先祖様に対して失礼にあたることはありません。
ここでは、ポイントとなるお供え花の選び方を3つご紹介します。
- 黄金比率は「白:色=7:3」
お供え花のベースは白や淡い色にしつつ、差し色として「シックで深い色」や「故人のイメージカラー」、「夏らしいビタミンカラー」を取り入れるのがよいでしょう。色つきの花は30%ほど混ぜると上品な雰囲気が保てて良さそうです。 - 新盆・初盆の場合は配慮を
故人が亡くなり、四十九日を過ぎてから初めて迎えるお盆を「新盆」もしくは「初盆」と言います。新盆・初盆でお供えする花は、親しい間柄であれば淡い色を供えてもよいとされていますが、基本的には白を基調とした花(白上がりの花)を選ぶのがマナーです。 - 形やスタイルでモダンな雰囲気に
横幅を取らない縦長の仏花も伝統的で素敵ですが、こんもりとお花をあしらったラウンドスタイルのアレンジメントも洗練された印象を与えます。またバスケットを使用したものやリボンつきのアレンジメントをお仏壇に飾れば、上品かつおしゃれなお供えになるでしょう。
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僧侶に教わる、お盆の基礎知識 お盆の時期・お供え(精霊馬・提灯・五供)・お墓参りマナーなどを詳しくご紹介します。 |
お盆のお供え花は菊だけじゃない!モダンでおしゃれな花7選
お盆のお供えに取り入れることで季節感やトレンド感が上がるお花の種類を、いくつかご紹介します。
「今年のお盆は菊以外の花を供えたい」「モダンで明るい雰囲気のお供え花にしたい」「故人のために洗練された空間を作りたい」という方は、ぜひ選択肢に加えてみてください。
1.ひまわり(向日葵)

夏の代名詞・ひまわりは、ご先祖様や故人に季節の訪れを感じていただけるお花です。
父の日の贈り物としても人気の花であるため、亡くなった父や夫を想って供える方も多いそう。
「あなただけを見つめる」という、故人に深く寄り添うような花言葉も素敵です。
眩しい黄色と丸く開いたひまわりの花姿は、お墓やお仏壇の雰囲気を明るくしてくれます。
お盆のお供え花に取り入れる時は、白い花や青い小花と合わせることで夏らしく爽やかな雰囲気になります。
また小ぶりの品種(ミニひまわり)を使用することでひまわりが悪目立ちすることなく、より一層上品に仕上がるでしょう。
2.トルコキキョウ

ウェディングや誕生日などのお祝いシーンで高い人気を誇るトルコキキョウ。
比較的花持ちが良く花びらが散りにくいことから、実はお供えにも適しています。
その花びらはフリルのように美しく、普段のお供え花を格上げしてくれます。
お供え花にトルコキキョウを使用する際は、白やピンクのトルコキキョウを取り入れて優しい印象に仕上げるのがおすすめです。
特に白のトルコキキョウには「永遠の愛」「思いやり」という花言葉があるので、故人を想う花として意義深いお供えとなるでしょう。
3.ユリ(オリエンタル系)

すでにお供え花の定番であるユリ。
日持ちが良いことのほかに、美しく高貴な姿が故人へ敬意や哀悼の意を示すのに適しているためです。
ユリの中にもテッポウユリ(鉄砲百合)など様々な品種がありますが、お供えにはオリエンタル系のユリ(オリエンタルリリー)がおすすめです。
カサブランカなどの品種がこれにあたります。
オリエンタル系のユリは大輪で豪華なのが特徴的であるほか、強い香りを放つため、故人のもとへ気品溢れる香りが届くかもしれません。
お供え花にユリを取り入れる際は、白はもちろん、華やかなピンクのユリもおすすめです。
あえて蕾の状態のものを選ぶことで、お盆の期間中に花が開いていく、そのドラマチックな変化の様子を楽しむこともできます。
一方で、ユリの花粉には要注意。衣服などに付いてしまうと簡単には落ちないため、花粉は必ず取り除いてからお供えするようにしましょう。
4.リンドウ(竜胆)

青紫色の落ち着いた色合いや「あなたの悲しみに寄り添う」という花言葉から、お盆の代表花とも言えるリンドウ。
既にお盆の定番とされていますが、その鮮やかな色彩やシャープで涼し気なフォルムから、お供えアレンジメントを引き締める役としても非常に優秀です。
例えばラウンドスタイルのお供えアレンジメントに組み合わせることで、今までにないモダンで洗練された表情を見せてくれます。
またリンドウの青紫色は、白やグリーンと相性が良いです。
それらを合わせてお仏壇やお墓を彩れば、夏の暑さに負けない涼しげな雰囲気を醸し出してくれるでしょう。
5.アンスリウム

個性あるトロピカルな姿が魅力的な、アンスリウム。
熱帯地域原産の植物であるため、お盆時期の暑さに強い点も魅力の一つです。
アンスリウムは、一見お供え花には縁遠いイメージがあるかも知れません。
しかし、堅苦しくないリゾートモダンな仕上がりのお供えになることから、洋風のお仏壇などにぴったりだとされています。
またアンスリウムと言えば赤が人気ですが、お供え花に取り入れる際は、白やグリーン、パステルピンクといった淡い色合いのアンスリウムを選ぶのがよいでしょう。
特にピンクのアンスリウムには、「飾らない美しさ」という花言葉があります。
ご先祖様や故人の前では自然体でいる、という実直な姿勢が表現できるはず。
6.クルクマ

エキゾチックな姿が隠れた人気を誇る、クルクマ。
その見た目は極楽浄土の象徴である蓮の花にも似ていることから、お供え花・仏花に適しています。
水揚げがよく長持ちしやすいため、正しくお手入れすることでお盆の期間中も美しい状態を保てるでしょう。
そんなクルクマが市場に出回るのは、暑さの盛りである6月~9月にかけて。
裏を返せば、夏季以外の流通は皆無と言ってよいでしょう。
そのため夏の限定花としてお盆のお供え花に取り入れることで、「知る人ぞ知るお盆の花」「こだわりのお供え花」に仕上がります。
お供えする際は、白やピンク、グリーンのクルクマで凛とした雰囲気に仕立てるのがおすすめです。
7.グリーン(葉物)

お供え花をよりおしゃれに引き立てる存在として、グリーン(葉物)を大胆に取り入れてみてはいかがでしょうか。
夏(お盆)の時期は流通するグリーンの品種も多くなります。
例えば、以下のグリーンがおすすめです。
- 利休草(リキュウソウ)
花言葉は「奥ゆかしさ」「謙虚」など。繊細で美しい蔓(つる)を持つ。 - ユーカリ
花言葉は「再生」「思い出」「追憶」など。プリザーブドフラワーやドライフラワーとしても最適。 - ドウダンツツジ
花言葉は「上品」「節制」など。トゲや毒がないためお供えに最適。
お盆のお供え花にグリーンや枝物を取り入れることでボリュームアップするだけでなく、ナチュラルかつ爽やかな印象になります。
また青々としたグリーンが夏の原風景とマッチし、ご先祖様や故人も「涼」や季節の移り変わりを実感できるでしょう。
お盆は花とともに「あなたらしい想い」を届けましょう

今回の花だよりは、お盆に最適な、いつものお供え花をワンランクアップさせるコツや花の種類をご紹介しました。
今年(2026年)のお盆は8月13日(木)〜16日(日)。
冒頭でも説明しましたが、お盆はご先祖様や故人に感謝の気持ち・変わらぬ想いを伝える期間。
義務ではなく、故人と心を通わせる温かい時間です。
だからこそお供え花においても型にはまったものを用意するのではなく、生前に故人が好きだった花、故人のイメージに合った花、故人が見て喜びそうな花を供えてみてはいかがでしょうか。
また、いつもと違うおしゃれな花を供えてみることで仏間やお墓の雰囲気も明るくなり、お盆に集まった親族同士の会話も弾むことでしょう。
花キューピットでは、定番のお供え花はもちろん、新盆・初盆に適した白上がりのアレンジメントや、ここでご紹介したひまわりやリンドウを取り入れたおしゃれなお供え花をご用意しています。
今年のお盆を迎える前に、ぜひチェックしてみてくださいね。
花を創るひと。#1 【産地:モテギ洋蘭園】
花をもらう人がいれば、花を贈る人がいて、
その花を束ねたり、綺麗にあしらったりする人がいる。
さらにルーツを遡れば、その花を育てる人がいる。
美しい花が美しい理由を探るべく、花キューピットが「創り手」のもとを訪ねます。
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モテギ洋蘭園
今回、取材担当者が訪れたのは、埼玉県本庄市にハウスを構える<モテギ洋蘭園>。
ここで生産されているのは、お祝いギフトの最高峰とも言える花・胡蝶蘭です。
3,200坪の広大な敷地で、ミディ胡蝶蘭を年間約15万株、大輪の胡蝶蘭を約12万株生産しています。
モテギ洋蘭園の胡蝶蘭は、国内で生産されている胡蝶蘭の中でもまさに一級品。
数多くのコンクールや品評会で受賞歴がある、高品質な胡蝶蘭です。

物腰柔らかに対応してくださった広瀬さん
取材に応じてくれたのは、販売企画部長の広瀬隆司さん。
学生時代はデザイン系の専門学校に通っており、当時は広告関係の会社に就職しようと考えていたそう。
しかし花を扱う授業を受けていた時、講師を務めていた花屋の方に「うちに来い」と言われ、方向転換。花屋で一年間勤めたのち、21歳で株式会社モテギ洋蘭園に入社しました。

ハウスは全部で17棟ある
胡蝶蘭栽培は「苗の品質」が8割
モテギ洋蘭園が作り出す胡蝶蘭の最大の強み、それは高品質で長持ちすること。
ズバリその秘訣を広瀬さんにお聞きしたところ、「胡蝶蘭の品質を左右するのは苗ですね。8割くらいは苗です」と言います。

モテギ洋蘭園での胡蝶蘭の栽培は、台湾からやって来る苗の手降ろし作業から始まります。
一度に届く数は300ケース程度で、全て手作業で行われます。
台湾における胡蝶蘭は、言わば「国策」の位置づけ。農業輸出額の約9割を蘭(そのほとんどが胡蝶蘭)が占める、重要な産業です。
モテギ洋蘭園はそんな台湾に自社農場を構え、苗の生育に最適な、温暖湿潤な気候のもとで苗を栽培しています。
台湾の現地で苗の栽培を手がけるのは、モテギ洋蘭園の子会社であり現地法人の<仁蘭園>。
仁蘭園は、台南市後壁区にある胡蝶蘭の生産団地『胡蝶蘭パーク』にハウスを構えています。
「外周が10kmくらいある広い土地で、そこに何十社もの企業が温室を建てています」
台湾の国策ということもあり、『胡蝶蘭パーク』に温室を構えることができるのは「台湾人向けに胡蝶蘭を販売している企業のみ」というのが通例。
それにも関わらず、モテギ洋蘭園は2011年に現地での温室建設を果たしました。
「今の大統領、頼(清徳)大統領が台南市長だった時に良くしてくれて。日本の企業で唯一、特別許可を受けて入ることができたんです」
「日本でも世界最高品質の胡蝶蘭を」というモテギ洋蘭園の情熱が、難しいと思われた誘致に繋がったのかもしれません。
そんな台湾の仁蘭園で育てられる苗は「実生苗(みしょうなえ)」と呼ばれ、その管理期間はなんと約3年半!
3年半の育成の末、モテギ洋蘭園に届いた実生苗は、開花までさらに半年を要します。

矯正されている苗
「首も伸びてくるので、この段階で矯正をしていくんです」と広瀬さん。
「花も本来は全部光(太陽)の方向に向いていくのですが、上手く行かないものが出てくるんです。太陽の方に正直に向かないものとか、ぐるぐる回転しちゃうものとか。それらとの戦いです」
支柱と洗濯バサミで、一つずつ苗を矯正する作業。
「出荷までに必ず5回は人の手が入る」という広瀬さんの言葉通り、胡蝶蘭は苗の段階から手間と労力を要することが分かりました。
そうして足掛け4年でようやく花が咲くまで成長した訳ですが、実はまだ折り返し地点に過ぎないのです…。
「世界にひとつだけの花」から「優秀なクローン」へ
私たちの想像する胡蝶蘭は、みな似たような花の形をしています。
一方、実生苗の花の形は様々で、2つとして同じ花は咲かないと言います。
「オリジナル。良く言えば“世界にひとつだけの花”ってやつなんですけど、そういうのはあまり売れない。まあ確かに、花を持たないものとかも急に出てくるんですよね」


個性が表れている実生苗たち
さらに言うと、実生苗の胡蝶蘭を規格品と認識していない花屋が多いそうです。
「(実生苗の胡蝶蘭は)お花屋さんにとって得体の知れない花なんですよ。それを高くは買ってくれないので、生産者は損してしまう」
損をしないための、美しい胡蝶蘭として認めてもらうための、次の工程。
それは、開花した実生苗の中から厳選し、質の良いクローン苗を大量に生産すること。
「花がより多くつくものとか、花の並び方が綺麗とか、花持ちが良いとか、葉っぱがコンパクトかどうか、根が張っているか、とか。あとは需要の高い色とかもありますし」
様々な基準で“優秀な胡蝶蘭”を選び出し、バイオ技術を用いて交配し、クローンを量産する。そうして生産される苗は「メリクロン苗」と呼ばれます。

健やかな根。親指より太く仕上げるのがモテギ洋蘭園の目標だそう
モテギ洋蘭園で増殖したメリクロン苗は、実生苗と同様の工程で育てられます。
台湾で3年半管理されたあと、再びモテギ洋蘭園で開花〜出荷できる状態まで育成。
花芽が出てから、大輪の胡蝶蘭は約7か月、ミディ胡蝶蘭は約5か月半で出荷されます。
「台湾は一年中暖かいので、ちゃんとクーラーをかけない限り花芽が出ないんですよ。むしろその気候を利用して、台湾では花を咲かせずに苗を大きく太らせる。そして日本でやっと花を咲かせるようにする。これができるから、胡蝶蘭は一年中出荷できるんです」
台湾でしかできないこと、日本でしかできないことを互いに補完しながら、モテギ洋蘭園は一貫体制を築いています。
そして合計8年という長い年月をかけ、オリジナル品種の胡蝶蘭栽培を実現させているのです。

胡蝶蘭の栽培過程 ※参考:モテギ洋蘭園HP(https://www.motegiyouranen.com/)
胡蝶蘭の美しさと届け先の配慮
花芽がついた胡蝶蘭はモテギ洋蘭園の適切な環境下で管理され、仕立てられ、美しい姿に変化していきます。
例えば、そのしなやかなステム(茎)。
いくら肉厚で大きな花を咲かせたとしても、その花が正面向きに順序良く並んでいなければ、高品質な胡蝶蘭とは言えません。
モテギ洋蘭園は美しいステムを追求するために、また輸送時に形が崩れないように、支柱の太さや硬さ、その立て方にこだわっています。
「早いうちから支柱を入れて矯正する場合もありますが、あまり早く(ステムを)曲げてしまうと、ちゃんと生育しない場合もあって。ある程度ステムがしっかりしてから支柱で曲げていきます」

支柱を入れる作業台。これもまた労力を要する作業

左が太い支柱、右が細い支柱
様々な種類の支柱を使用しているモテギ洋蘭園。
支柱の立て方には、“見栄え”や“輸送のしやすさ”だけでなく、胡蝶蘭を受け取った方への配慮も表れています。
「例えば植え替えをする時とか処分する時とか、花が終わった後のことを考えると、細い支柱の方が取り扱いがしやすいんですよ」
「私たち(生産者)はグニャグニャ曲げられますけど」という太い支柱。
取材担当者もお借りして曲げようとしましたが、想像よりもずっと硬く丈夫で、確かに扱い方によっては不便さや危険性を感じてしまうかも。
「だから、細い支柱でも形が崩れないような支柱の立て方を開発中です。少しずつ改善させています」
モテギ洋蘭園にとっては、「美しい胡蝶蘭を美しい状態でお届けするまで」がゴールではありませんでした。
お届け先の立場に立って行われる、後工程まで視野に入れたぬかりない調整。
支柱の立て方ひとつから、そうした創意工夫の姿勢が理解できました。
全国各地のお祝い事に寄り添う

瑞々しい胡蝶蘭がずらりと並ぶ
苗の熟成には高温室、細かな管理ができる開花室を経て、ある程度の花を咲かせた胡蝶蘭は「ストックヤード」と呼ばれるハウスに移動します。
ストックヤードで胡蝶蘭は出荷待ちの状態になりますが、ここでも養生は続きます。
「3~4日に一回、水やりもします」と広瀬さん。
少ない回数のように思えましたが、植え込み材を水苔からバークと呼ばれる木のチップに変えたことで、水やりの頻度はこれでも増えたそう。
「水苔は保水性が良いという特徴があります。なので水やりも6日に一回とかでした。ただ水をあげたらあげたぶんだけ吸って、しかも乾きにくいので病気になりやすいんですよね」
一方、水はけの良いバークは余分な水を吸収しないという特徴があり、水やりの回数は増えましたが管理がしやすくなったそうです。

こちらが「バーク」
このようにストックヤードで管理された胡蝶蘭は、様々な企業や団体、あるいは個人から個人への贈り物として、全国各地へ配送されます。

沖縄を除き全国に配送される
「梱包にもこだわっているんです」と広瀬さんは教えてくれました。
「箱が横に倒れてしまっても、なるべく傷まないような梱包をしています。(ステムを)後ろで止めたり。あとは厚みがある段ボールを使っているので、衝撃とかで潰れたりすることは滅多にないです」
またモテギ洋蘭園では、外気温に合わせて使用する段ボールも変えているそう。
「普通は、この段ボールのなみなみ(中芯)が一重なんですけど、冬場は二重の段ボールを使って保温します。これで気温の低い地域にも配送できるようになってます」
寒い場所が苦手な胡蝶蘭ですが、少しでも長持ちするよう、こだわりの梱包資材でお届けしています。

こちらが冬期用の段ボール
胡蝶蘭を再び咲かせる方法
胡蝶蘭の生産者、言わば専門家である広瀬さんに、花が落ちた胡蝶蘭を再び咲かせるコツについて尋ねました。
ポイントは2つだと言います。
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- 茎の切り方
- 温度管理
まず、茎の切り方。
「ここが節なんですよ、茎の節。ここから芽(花芽)が出ます」

人差し指で示している部分が「節」
胡蝶蘭の茎には通常、節が5〜6個あります。
それらの節には、それぞれ「腋芽(えきが)」と呼ばれる花芽になり得る器官がついているため、この節の上で茎を切り、節を残す必要があります。
「逆に、節をたくさん残してしまうと全ての節から芽が出ちゃって栄養が分散されます。そうすると花が咲かないこともあって。一番良いのは、2~3節残すようにカットすること」
いくつか節を残しておくことで栄養が行き渡り、再び花を咲かせる可能性が高くなるそう。
もう一つは温度管理。
「胡蝶蘭は、人間が適温だと思う環境がベスト」だと広瀬さんは言います。

モテギ洋蘭園では全ての温室にヒートポンプを導入。冷暖房を切り替えることができる
ちなみにモテギ洋蘭園の温室は21〜22℃で管理されており、目安としては長袖一枚で過ごせるくらいの気温。
自宅でもそれは同様ですが、夏場は日差しを避け、高温になりやすい場所(カーテンのない窓際など)には置かないこと。そして冬場は冷える場所には置かないことが大切です。
水やりは、植え込み材の表面が乾いた時に行いましょう。
モテギ洋蘭園では3~4日の間隔で水やりをするとご紹介しましたが、これは一般家庭だと多すぎるそうです。
置かれた場所の湿度や植え込み材の素材にもよりますが、バーク植えの場合は6~7日に一回程度が良いでしょう。
花が落ちてしまった場合でも諦めず適切に管理することで、再び美しい花を咲かせる可能性があります。
胡蝶蘭をプレゼントされた際は、挑戦してみてくださいね。
ミディ胡蝶蘭の「楽しさ」

温室は天井を高くすることで温度変化を最小限にし、空調効率を上げている
花キューピットでは、モテギ洋蘭園のミディ胡蝶蘭を販売しています。
取材中も、華やかな濃いピンク、愛らしさを感じる薄いピンク、元気がみなぎる黄色やオレンジなど、色とりどりのミディ胡蝶蘭が目を惹きました。
そんなモテギ洋蘭園のミディ胡蝶蘭は、自社で交配したオリジナルの品種がほとんど。
生産コストや技術面の問題から、独自に品種改良を行う団体は非常に稀。日本国内でも5社程度だそうです。
「やっぱりミディは育てていて楽しいです」と広瀬さん。
色で個性を表現できることの他に、ミディ胡蝶蘭を贈るという行為に「楽しい」理由があると言います。
「大輪の白い胡蝶蘭は、企業が形式的に贈ることが多いじゃないですか。その点、ミディ胡蝶蘭は個人がお祝いで贈ることが多いんです。だから、『あの色良かったよ』『綺麗なピンクにしてくれてありがとうね』なんて喜びの声があった時に、ミディやってて良かったなって思います」
また比較的若い年代の方も購入しやすいという点も、ミディ胡蝶蘭の魅力です。
「友達がカフェをオープンしました、とか。友達が結婚しました、とか。若い人がそうやってミディ胡蝶蘭を贈って相手に喜ばれたという体験をすることで、リピートに繋がっているんじゃないかな」
少しだけ個性的な、人と違う胡蝶蘭を贈りたい。
相手の好きな色やイメージに合った色の胡蝶蘭を贈りたい。
体験価値の高いミディ胡蝶蘭は、そういった贈り手の想いに寄り添うことができるギフトです。
高嶺の花であり続けること
少しだけ気になるのは、胡蝶蘭のこれからについて。
あらゆる物の価格が上昇している昨今、嗜好品である花を買い控える人も増えています。
胡蝶蘭についてもそれは同様で、生産量とともに生産者も減少し続けているようです。
高級花・胡蝶蘭の立ち位置は、今後どのように変化していくのでしょうか。

「もっと手軽に、身近な存在にしたいという気持ちはないですね」と広瀬さん。
「胡蝶蘭を一般普及させるべきだと考えている生産者もいます。だけど私の考えだと、胡蝶蘭は“高嶺の花”っていうキャラクターを崩しちゃいけないと思ってるんですよ」
花の市場が欧米諸国と比べて小さい日本。
百貨店で販売されている花が、ホームセンターでは半額以下で販売されていることも多々あります。
他の植物と比べて膨大な生産コストがかかり、手が届きにくい点こそがブランドの価値である胡蝶蘭は、こうした「意図しない流通」を避ける必要があります。
その点、モテギ洋蘭園の高品質な胡蝶蘭は、ブランドイメージを維持し得る知識や技術の賜物。
「胡蝶蘭農家にはトヨタくらいのブランド地位を目指す人もいるし、日産やダイハツを目指す人もいるかも知れない。うち(モテギ洋蘭園)は良い胡蝶蘭を作っている限り、ベンツとかポルシェとか、そういうブランドを目指しています」
高いブランド力を維持しながら、先を見据えて挑戦したいこともたくさんあるそう。
例えば、少子高齢化に伴うお供え需要への対応や、海外在住者向けのチャネル開設。
こうした販路拡大に加え、「飽きられない仕掛けをしていかないと」と広瀬さんは言います。
「例えばラッピングもモテギ洋蘭園オリジナルで作られたらな、と。あとは通年商品(年間通じて販売している商品)のリニューアルですね」
モテギ洋蘭園では品種改良のもと、年間で胡蝶蘭を5~6回リニューアルさせ、それをスポット商品(一時的に販売される商品)として販売しています。
「飽きられないために、提案する品種を変えていくこと。通年商品に対しても一回大幅にリニューアルさせて、バージョンアップしてやっていければいいな」

モテギ洋蘭園は、自らが手がける胡蝶蘭に誇りと自信を持っています。
同時に、いつだって向上心を忘れていません。
「良い胡蝶蘭を生産しているからには、他の生産者が絶対に真似できないくらいクオリティの高いものにしたい」
贈る人にとっても贈られる人にとっても特別な花、胡蝶蘭。
そんな花を創るのは、胡蝶蘭のステムのようにしなやかな心と、8年にもわたり胡蝶蘭の成長に向き合う真っ直ぐな心、その両方を持ち合わせた生産者でした。










