母の日特集, 花, 開架宣言
開架宣言 Vol.3_いとうみく『カーネーション』
花に対する愛や造詣が深い皆さまに向けた、花キューピットによる読書案内ブログ。
花も書籍も自由に開かれ、思い思いに楽しまれるべきではないか(開花・開架)。
そんなメッセージを込めた新連載、「開架宣言」。
今回ご紹介するのは、児童文学作家・いとうみく氏の『カーネーション』です。

聖母マリアが、処刑されたキリストのために流した涙から咲いた……という伝承のある花。カーネーションは母の日に贈る、母性の象徴としての花でもある。しかし、花言葉は色によって異なる。母への愛、純粋な愛、そして軽蔑、拒絶、失望。あたしは、まだ母に愛されたいと思っている。いつか母は、あたしを愛してくれると信じている。そんなことは無理だとわかっていても、あたしはあたしの深いところで、いまも願っている。/『カーネーション』くもん出版
「母に愛されたい」
一緒に買い物に行く。
一緒に台所に立って料理をする。
「ただいま」と言えば「おかえり」が返ってくる。
『カーネーション』は、そんな<ありふれた親子関係>を築くことができない母と娘の物語です。
主人公は中学一年生の日和。
物心ついた時から母に冷たくあしらわれ、拒絶されていると分かっていても、「母に愛されたい」と思い続けていました。
テストで良い点を取るのも、言動に気を付けるのも、自分のことは自分でやるのも、全て母・愛子に好かれるための努力。
しかし母の寵愛を一身に受けるのは、しっかり者の日和ではなく、駄々をこねてばかりいる日和の妹・紅子なのでした。
日和は時に仲間に救われながら、勇気を持って母に近づき、そして遠ざかります。
なぜ自分は母から嫌悪されているのだろう。
なぜ父は綺麗ごとばかり言うのだろう。
それでも「母に愛されたい」と願ってしまうのはなぜだろう。
そんな日和視点から母親視点へと移行し、母が日和を愛せない理由も明かされます。
家族という縁の難しさを知る、衝撃的で重いテーマではありながらも考えが深まる作品でした。
目を逸らさない大切さを知る
読み始めは正直、「これは本当に児童文学なのか?」と立ち止まってしまいました。
母から愛されることに必死な日和と、そんな日和を愛そうと必死な母。
互いの行動や思いの報われなさは、読者として形を保っていられないほど辛く感じます。
しかし、それは読者である私自身が母から無条件の愛を受け、健やかに育ってきた証拠だとも思うのです。
「良い成績を取ったから」「役に立つから」といった付加価値に関係なく、「娘だから」というたった一つの理由で可愛がられてきたからだと。
そして、母という立場を経験したことがない私は「親は娘を愛することが当たり前」だと思っているからだと。
わが子を愛したくない親など、いるはずがない。愛したくないのではなく、愛せないのだ。_p.127
愛したくないのではなく、愛せない。
今は日和の母に同情はできないけれど、いつか、その苦悩が理解できるのかも知れません。
また本作は、相手の立場を心から理解できなくても歩み寄ろうとする姿勢や、家族の形には正解・不正解などないといった学びがあるという点で、児童文学としての意義高さがあります。
作者であるいとうみく氏は、アノマーツ出版のインタビューで以下のように語っていました。
「書くって傷口をえぐるような作業でもあるんですが、結果的にそれで救われました。登場人物を掘り下げて書く。自分のことって案外わからないし、つらいことからは目をそらしたくなるのですが、物語として人物をある程度客観視しながら掘り下げていくと、逃げるわけにはいかなくなる。」(https://note.com/anomarts/n/n8525a9fd5832,2023年5月11日)
重苦しいテーマから作者自身も目を背けず書き綴った『カーネーション』。
大人も子供も読んでいてつらく感じる箇所があるかと思いますが、作者と同様、目を逸らすことなく読んだ先に救われる感情があるはずです。
カーネーション

本書からピックアップする花は、もちろんカーネーションです。
学名:Dianthus caryophyllus
科・属:ナデシコ科・ナデシコ属
原産地:地中海沿岸
開花時期:4月~6月
花言葉:無垢で深い愛
母の日に贈る花の代表格とも言えるカーネーション。
なぜカーネーションを贈る文化が誕生したのか。その由来は諸説ありますが、アメリカのアンナ・シャービスという方が亡き母を追悼するために、母が好きだったカーネーションを祭壇に飾ったという説が有力です。
母の死後も敬愛の姿勢を崩すことのないアンナに多くの人々が賛同したことで、「母に感謝する」という文化が母の日の制定とともに全土で広がっていったんだとか。
つまり、母の日の始まりはお祝いではなく弔事だったのですね。
先に説明した通り、カーネーションの花言葉は色によって異なります。
赤色のカーネーションの花言葉「母への愛」「熱烈な愛」など
ピンク色のカーネーションの花言葉「温かい心」「感謝」など
オレンジ色のカーネーションの花言葉「純粋な愛」「清らかな慕情」など
黄色のカーネーションの花言葉「友情」「美」「軽蔑」「失望」など
白色のカーネーションの花言葉「私の愛は生きている」「尊敬」など
全ての色がポジティブな花言葉だとは限らないからこそ、伝えたい意図に合わせてカーネーションを選ぶこともできます。
では、来る母の日、日和だったら何色のカーネーションを母に贈るのだろう?
そもそも、彼女は母の日に何かをプレゼントするのだろうか?
本作『カーネーション』を読み終えたとき、<ありふれた親子関係>を築けない二人に一縷の光が見えたとき、そんな疑問も解消されるはずです。
あたしは母を捨てた。そう思っていた。でも母を憎むことはできない。いまもやっぱり愛している。愛されたいと願っている。ただ、求めるかたちがかわっただけだ。_p.193
※本記事に掲載された書籍情報は、2026年4月時点のものです。
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