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  3. お盆・最新事情。精霊馬はブロッコリー、お花は自由?知恩院僧侶にインタビュー

最新のお盆事情
精霊馬はブロッコリー、
お花は自由に?

知恩院僧侶インタビュー

お盆を英語で何と呼ぶか、ご存知ですか?

答えは「Obon Holiday」「Obon vacation」など。

日本独特の行事であるお盆は、それを表す英語が存在しません。

そんな日本文化・お盆ですが、コロナ禍の影響で2020年以降その形にさまざまな変化があったようです。

そこで今回は、2020年以降のお盆事情や2023年のお盆の過ごし方などについて、知恩院の僧侶であり、華道家としてもご活躍されている大津憲優さんに教えていただきました。

2023年のお盆

  • ①7月13日(木)~7月16日(日)
    旧暦7月盆のエリア(主に関東、東京・神奈川県、北海道の一部や石川県金沢市、静岡県など)
  • ②8月13日(日)~8月16日(水)
    新暦8月盆のエリア(東北、新潟県、長野県、関西地方など)
  • ③8月28日(月)~8月30日(水)
    旧暦盆のエリア(主に沖縄)

※上記は大まかな区分です

今回お話してくださった
僧侶 兼 華道家さん

大津憲優さん

大津憲優さん

浄土宗修練道場・華道講師

西雲寺第二十一世住職

正念寺第三十八世兼務住職

知恩院の所属寺院に従事する傍ら、都未生流の華道講師としてもご活躍中

コロナがきっかけで確立された「オンライン法要」

――コロナ禍におけるお盆、お寺ではどのような変化がありましたか?

コロナ禍では、多くのお寺が三密を避けて行事を断念したり、住職一人が本堂でお勤めしたりと、これまでのお盆行事の光景が一変しました。

その中でも一番の変化は、オンライン法要の様式が確立されたことではないでしょうか。 自坊(※)でも、コロナ元年といわれている2020 年のお盆では、数件のオンライン法要を勤めました。

その後2021 年から、私のお寺ではお盆のお勤めの方法として

  1. 1.ご自宅へのお盆参り
  2. 2.本堂でのお勤め(お檀家さんがお寺に来る)
  3. 3.オンラインでのお勤め

の3つから好きな方法をお檀家さんに選択していただいております。

※自坊とは
僧侶が住んでいるお寺

――アフターコロナへと少しずつ向かっている2023年以降のお盆は、どうなると予想されますか?

意外にも2021年以降もリモートでのお勤めを選ばれる方は、ほぼおられませんでした。 「お盆の期間より日にちが多少ずれても良いので、自宅までお参りに来てほしい」という方が多くなり、従来通りのお盆参りを希望される方が増えましたね。

初盆などの大事な節目には、やっぱり直接想いを伝えたい方が多いのだと改めて感じました。

――ということは、2023年以降は、従来の「親族全員で集まるお盆」に戻るのでしょうか?

それは可能性としては低いでしょう。

今後は「親族で集まるお盆」から「家族だけで集まるお盆」へと急速に形が変化すると思います
コロナ禍以前から既にそうなりつつありましたが、親族全員がお盆や法事で集まることが難しい時代になっていますからね。

「オンライン参加」という新しい選択肢もとりやすくなっていますし、今後も時代に対応した様々な形に変化していくのではないでしょうか。

お盆に行けない…だからこそ「すべきこと」って?

――お盆の時期にご実家に帰れない方々が、自宅でできることはありますか?オンライン法要の際にすると良いことなどがあれば教えてください。

ご自宅に精霊馬を飾ったり、お花を飾ったりするのはとても良いと思います。お仏壇がない場合でもご先祖様を想って飾ってあげてください。

特にお花は、大切な方を偲ぶ想いが形になったものなので、良いですね。ご実家などにお花をお贈りするのも良いですよ。

感謝は、胸の内で想っているだけではあかんのです。形に表すことで、想いは初めて伝わりますし、深まりもします。それと同様に「形を作るから、想いが生まれる」こともありますよね。

精霊馬はキュウリやナスじゃなくても…

――先ほどチラっと話されていた精霊馬ですが、なぜキュウリやナスが使われているのでしょうか?

精霊馬は、ご先祖様があの世とこの世を行き来するときに使う乗り物として、私たちがご準備するものです。

キュウリは「ご先祖様が、お浄土から早く家に戻って来られるように」という意味を込めて、足の速い馬に見立てています。

一方でナスは「ご先祖様が景色を楽しみながら、ゆっくりとお浄土へ帰ってもらえるように」という心遣いから、歩くのが遅い牛として見立てているんです。

ただ、馬と牛が逆になる地域もあります。なので、極論ではありますが、ご先祖様への想いさえあれば大丈夫です。そのとき手に入れやすいもので作ってください。

――では、アスパラガスやブロッコリーもOKでしょうか……?

そうですね……(笑)アスパラガスは速く帰ってこれそうですし、ブロッコリーはお浄土に帰るときに手土産をたくさん載せられそうですね。

でも、ネギやニラなどの匂いのきつい、仏教で「気持ちを落ち着かなくさせる」と言われているお野菜は避けてください。

精霊馬の飾り方・マナーなど
「お盆の基礎知識」はこちらをチェック

僧侶に教わる、
お盆の基礎知識

お花の力で、命をゆっくり見つめ直す

――精霊馬はご先祖様の乗り物だということはわかったのですが、お盆にお花を供えるのはなぜでしょうか?

お仏壇やお墓に供える花は、仏様の慈悲の心を表しています。綺麗な花を見て、仏様の慈悲の心に触れると、やはり心が安らぐものなんですよね。心を穏やかにして、ゆっくりとご先祖様に想いが伝えられるように、私たちはお花をお供えをするのです。

また、お花は切り取られることによってその命を一度は終えますが、少量の水に養われて、時期がくるまで綺麗に咲き続けます。花と同じように、私達もこの世に生まれたと同時に死ぬことが約束されていますが、その時がくるまでは精一杯生き続けます。

「命には限りがあること。でも、その時がくるまで、花のようにしっかりと生きよう」と思い返す意味も込めて、お盆にお花を飾るのです。

――お供えするお花に地方ごとのマナーやルールもあるのでしょうか?

基本的には、どの地域でも身近な植物をお供えします。「盆花迎え」といってお盆の時期に仏前に供える花を山から摘んでくる地方もあるんですよ。

ただ、ご家庭、特にご年配の方のなかには、地域マナーを気にされる方がいらっしゃるケースもあります。細かいルールはその地域のお花屋さんが知っていると思うので、気になる場合は聞いてみると良いかもしれません。

花キューピットはお届け先の地域にある
花屋さんがアレンジします

地域の風習に合わせた
お花を贈る

檀家さんとアツアツのコーラの思い出

――お供えについて「お菓子は袋から取り出す」「果物は皮をむく」「ビールは栓を開ける」などの決まりはあるのでしょうか?

結論からいうと、そういったルールは一切ありません。そのままお供えしていただいて何も問題ありません。お供物は故人を偲び、思い出すことに意味があります。私達は物を通して亡くなった方を身近に思い出すことがありますよね。

――大津さんも、何か”物”がきっかけで、故人を思い出される経験があるのでしょうか?

私のお檀家さんで、もうお亡くなりになられましたが、お盆にお参りに行きますと、コーラを必ず出してくれるおばあちゃんがいました。当時の私が若かったので、コーラが好きだと思われたんでしょうね。

でも、そのまま出すのは失礼やと思ったんでしょうか、コーラを丁寧にアツアツにして出してくださるんです。私も最初はびっくりしましたが、年々慣れて普通に飲めるようになりました。

さすがに自分で温めて飲むことはありませんが、今でも夏場、生暖かいコーラを飲むと、やっぱりそのおばあちゃんを思い出します。

皆さまにも「あぁ、あの人、あれ好きやったな」「この銘柄のたばこ吸ってはったなぁ」と思い出された経験があると思います。ぜひ大切な人が生前好きやった物をお供えして、その供えた物を見て故人を身近に思い出し、偲んでみてください。

――精霊馬もお花もお供えも、結構自由でいいんですね……!

そうですね、一番大切なのは「感謝し、偲ぶこと」です。ただ、最初にも言いましたが、感謝は想っているだけでは伝わりません。精霊馬などでしっかりご先祖様をお迎えしてあげて、お花に感謝の願いを込めて、飾ってあげてください。

そのときにどのようなスタイルでするかは、それぞれの自由で大丈夫です。

お盆は、罪を犯した祖先へ感謝を示す行事でもある

――そもそもの質問になるのですが、お盆の由来を教えていただけますか?

お盆の由来は、『盂蘭盆経』というお経からきています。とても興味深い話なので、お話しますね。

昔、お釈迦様のお弟子の一人に、神通力第一といわれた目連尊者(もくれんそんじゃ)という方がおられました。

目連尊者はあるとき、神通力を使って「(亡くなってしまった)優しかったお父さんお母さんは今頃どうしてるんかな?」と、調べられました。

調べたところ、お父さんは極楽世界で幸せに過ごしておられましたが、お母さんの姿が見当たりません。何度も何度も極楽の隅から隅まで探しても、どこにも見当たりません。

もしやと思い、地獄の世界を探してみると、大切なお母さんは餓鬼の世界に落ちてもがき苦しんでいたのです。目連尊者は何とか助けようとしました。しかし、どうすることもできず、お釈迦様にご相談されました。

「お釈迦様、私のお母さんはとても優しい人だったのに、なぜ餓鬼界に落ちてしまったのでしょう」

お釈迦様はこう答えました。

「目連よ、お前のお母さんは、お前にとっては優しいお母さんだったかもしれないが、お前を守るために、時に他人を傷つけたこともあった。嘘をつくこともあった。だから餓鬼道に落ちてしまったのだ」

「……どうすればお母さんを助けることができますか」

目連が尋ねると、お釈迦様は

「7月15日、僧の修行が終わるそのときに、できるだけ多くの御供養をしなさい。そうすれば、その供養した“徳“によってあなたのお母さんは救われるでしょう」と言われました。

そして目連はそれを実行し、その報いとしてお母さんは餓鬼道から救われました。

これがお盆の由来です。

一般的に考えて、自ら罪を作ろうなんて思う人は滅多にいないですよね。でも、ついつい自分の子供を優先させたり、大切な人や大事な物を守るために罪を作ってしまう、それが我々です。

逆に言うなら、今、私達が毎日を平穏に暮らせているのは、父や母が自分のために罪を作ってくださったからこそではないかと思います。そういう想いで育ててくださった両親やご先祖様に改めて感謝するのが、お盆の行事だと思います。

だから、繰り返しにはなりますが、できることでいいので、ご先祖さまをお迎えして、ぜひ感謝を伝えてあげてください。

お盆事情まとめ

「諸行無常」というお釈迦さんの教えのように、今後もきっとその時々の事象が起こり続けます。そして、それぞれに応じたツールや様式が誕生して、直接お参りができなくとも「たくさんの選択肢の中から、その人にあった弔い方を選ぶ時代」になっていくでしょう。

そのなかで一番大事なのは、ご先祖様や亡くなったご家族・大切な方のことを思い出し、偲び、愛と感謝を形に表すことです。

"「気持ちが大事」「気持ちさえあればと良い」と言いますが、「想いと形」は車の両輪のようなものです。想いをお花などで形にしてみると、心で思っているだけではできない良い経験を得られますよ。"

と大津さんも仰っていました。
たとえ帰省ができなくてもお墓参りに行けなくても、精霊馬やお花で、大切な想いを形にしてみませんか。